あのねっ、お姉ちゃん龍太郎に紹介したい人がいるのっ

「な、薙沢 秋帆ですっ…はじめまして、龍太郎君…雛ぎ…お姉さんにはお世話になってます…」

「おぅ」

秋帆の言葉にも、龍太郎はぶっきらぼうに返事するばかり。

その視線は、テーブルの上に置かれている秋帆の両手に。

「…拳…」

「え?」

龍太郎の言葉に、秋帆はキョトンとする。

「拳、タコができてねぇな…空手してんのに、綺麗な拳だ」

「ハッ!」

慌てて手を隠す秋帆。

「それに耳の形もいい…柔道やレスリングやってんなら、寝技の稽古ん時に耳が擦れて潰れるもんなんだがな…」

流石龍太郎、着眼点が違う。

如何に頭脳明晰の秋帆とて、格闘技に関しては龍太郎を誤魔化す事ができないらしい。