「ルゲイエ兄貴、あいつ倒せるか?賞金首リストの中でCランクに位置する兄貴なら倒せるんじゃないのか?」
「お前は馬鹿かザキ!あいつが誰か知らないのかお前は!?」
「そんなの知らないっすよ」
ルゲイエはザキに怒鳴り付けて言うが、不思議そうな顔をして言うザキ。
ルゲイエはザキの無知に頭を抱える。
「兄貴!見てください!」
ザキの声が掛かりルゲイエは下にいる青年を見る。青年は最後の手下に歩いて行き、手下は縋るように青年の服を掴むが、血の色に染まった剣を無常にも首目がけて一閃する。首が飛び、胴体から夥しい血が噴水のように吹き出す様に思わず顔を背けるルゲイエとザキ。
青年は見向きもせず二回へと繋がる階段へと足を運ぶ。
綺麗な白銀色をした青年――ルイ――は二回へと繋がる階段を上り、奥の部屋へと繋がる通路を歩くと、二人の男が視界に入り立ち止まる。
ルイは二人の男に目を向ける。その目には感情という感情が無く光を宿していなかった。
ザキはその目を見ただけでガクガクと足が震えるのを感じた。逃げないといけないと思うが足がまったく動かせないのに焦りの表情が浮かぶ。
ルゲイエは逃げるための模索を始めるが、この青年から逃げるだけなのに、逃げれない可能性が皆無なのを知り、額に汗が滲むのを拭い立ち向かうため水の剣を瞬時に形作る。
「ハァ!」
ルゲイエは素早い動きでルイの背に回りこみ、横に一閃する。肉を切ったような手応えが無かったルゲイエは自分の剣に血が付いていないを見て怪訝な表情してルイを見る。そして驚愕の表情へと変わる。
切られたルイの体は歪みはじめ透明な水へと変わり、通路の地面へと落ちる。水で分身を作られたルイを切ったことに苛立ち気に舌打ちし、ルゲイエは辺りを見回す。スパッと肉が切れるような音が聞こえその場所を見る。ザキの頭が無く胴体から血を吹き出しながらゆっくりと倒れる。
コロっと音が足元からしたのでルゲイエは見ると、恐怖に顔を歪めたザキの飛ばされて絶命した顔がそこにあった。
「ひぃ!」
短く悲鳴に似た声をだし、後退する。その顔は恐怖に駆られ、怯えた表情しかなかった。もはやCランク賞金首ビルト・ルゲイエの姿はそこにはなかった。


