町長の屋敷のある一角の部屋では男、ビルト・ルゲイエが上半身裸で椅子に腰掛け火照った艶やかな体を、窓から流れてくる風で冷ましていた。テーブルに置いてあるワインをグラスに入れ、たっぷりとワインが入ったグラスを持ち一口飲み込み、息を吐く。そして、先程から部屋の入り口であぐらをかいて今までずっとしていた行為を終始見ていたザキに視線を向ける。
 その視線に気付いたザキは気まずそうにルゲイエに話し掛ける。

「もういいか?」

「ああ、なんのようだ?気絶してここに運ばれて来たそうじゃないか、ザキ」

「もう、そのことには触れないでくれ」

 ザキは不機嫌そうにしてルゲイエに言う。
 ルゲイエ短く切られた水色の髪を触り、グラスをテーブルに置いてザキに問い掛ける。

「いったい誰にやられたんだ?」

「恥ずかしい話だが、白銀色の髪をした青年にやられた」

「白銀色の髪をしたやつか…」

 ルゲイエはザキの言葉を反復し、顎に手をやり考える仕草をする。思い当たる節はルゲイエの中で一つあるが、その可能性はきわめて低い。まだまだ賞金首リストの中でランクが低い俺のところに、あんな奴が来るはずが無い。
 ルゲイエは顎に手を添えていたのを戻し、テーブルに置いてあるワインの入ったグラスに手を伸ばし口元に持っていき、一口飲み、悔しそうな顔をするザキを一瞥する。そして椅子から立ち上がると、耳をつんざくような絶叫の叫び声が屋敷全体に響いた。ザキとルゲイエは驚きお互いの顔を見る。
 二人は急いでこの部屋から出て、叫び声が聞こえた中央ホールに走っていく。
 中央ホールに着いたザキとルゲイエは驚きと残酷なまでの光景に恐れを抱く。
 二人の視線の先には白銀色の髪をした青年が確実に無駄の無い動きで、ルゲイエの手下達の首と胴体を切り離し一人また一人と絶命さしていく。その度に白い綺麗な大理石のような石が手下達の血で赤く染まっていく。

「ルゲイエ兄貴…あいつに俺やられたんだ…」

「ちっ!最悪だぜ」

 ザキは下で次々と手下達を絶命さしていく青年に冷や汗を流しながら怯えた表情でルゲイエに言う。
 ルゲイエは忌々しそうに下で手下達を殺していく白銀色の髪をした青年を見て、苛立ちげに言う。