屋敷の中央にある広い空間で酒を片手にのんびりと過ごしていたビルト・ルゲイエの子分達は、突然玄関の扉を突き破り、椅子や机を巻き込んで入ってきた二人を見て愕然とした。二人は体をくの字に曲げ、服には血や胃液が付いたことで色が変色し赤黒くなっている。一人にいたっては見るに耐えない姿を晒していた。
気絶している二人を見ていた子分達は突き破ったことによって壊れた玄関の方に視線を向ける。壊れた玄関の中から一人の人影が姿を現し、中央ホールまできた人の形をしたシルエットはその姿を現す。白銀色の髪を揺らした青年は無表情に子分達を冷めた目で見る。その目には感情は籠もっていなかった。ありとあらゆる物を凍て付かす目でしかなかった。
その目を見た子分達は経験したことの無い恐怖を覚え背筋を凍らす。
青年は一歩また一歩と確実に歩を進め、子分達との距離を縮める。
その様子に一人の子分が恐怖に耐えれず、近くにあった酒ビンを片手に叫びながら青年へと怯えた表情で向かっていく。
全ては一瞬であった。
青年へと向かっていった男が近寄り、酒ビンを振り下ろそうとした刹那、首が飛んだ。飛んだ首の男は瞬きを一回し、自分の身にいったい何が起きたのかわからず辺りを見ると、首の無い胴体が視界に入った。男は考えた。まったく自分と同じ服装をした首が無い胴体があり、自分は同じ仲間達が視界の下に移る驚愕の表情で自分を見ているのに。何気なしに自分の体を見て時が止まった。在るはずの体が首の下から無くなっていたのだ。飛んだ首は地面へと落ち、首の無い胴体を見てみるみる恐怖の表情へ変わり叫ぶ。
「あ″あ″ああああああ!」
耳をつんざくような絶叫の叫び声が中央ホールに響く。
時が止まって首を無くした胴体は時が動いたように首と繋がっていた場所から夥しい血が噴水のように吹き出す。辺りに血が溜まり、白い綺麗な大理石のような石を血の色に染める。そして、体内にある血を出し尽くしたのか、血によって水溜まりのようになった血の場所に倒れていく。
青年はビチャビチャと血を踏んだ音を響かせながら、恐怖の色に染まった子分達へと歩いていく。
恐怖の表情をして未だこっちに向かってくる少し血を浴びた白銀色の髪をした青年に子分達は一目散に辺りに散らばった。


