エレミールはそのことに気付いてるが、気にせず明るい声でルイに話し掛ける。

「ルイ、忘れてるよ氷蛍陣。無くても大丈夫?」
「お前、わかってて聞いてるだろ」

「あ、やっぱりぃ?ルイは武器が無くてもSランクぐらいまで余裕だもんね」

 エレミールはチロッと少し舌を出し、笑い掛けて話す。
 ルイはいつもと少し違うエレミールに訝しげな表情をする。

「何かあるのか?」

 その言葉を聞いたエレミールはルイには適わないな、と苦笑いを顔に浮かべ思う。

「ルイは相変わらず鋭いね。ルイの任務が終わってから話すよ。早く帰ってきてね」

「ああ、わかった。それじゃあ着いたから切るぞ?」

「うん、頑張ってね」

 ルイはその言葉を最後に、小型の通信機を切る。小型の通信機をジャケットのポケットに入れ、明かりが一際付いている屋敷を見上げる。
 屋敷からは騒がしい声が静かな通りに響いてくる。近くの家からは息を殺すように静かにして、笑い声や声すら聞こえない。目を付けられないようにするかのように、町長の屋敷以外の家からは何も聞こえない。
 ルイは目を細め、全てを凍り付かせるような冷たい視線を屋敷に向ける。そして屋敷の門に入っていった。

 ルイは町長の屋敷にある鉄の門を開けると、屋敷の正門に喋って立っていた二人の男がこっちを見てくる。二人の視線を無視して淡々とした足取りで町長の屋敷の正門に向かう。が、二人の男がルイの前に立ちはだかってきたのでルイは立ち止まった。

「おい!ここが何処だかわかってるのか?ルゲイエ様が居る屋敷だぞ。わかったならさっさと立ち去れ」

「よかったなお前!俺たちはまだ優しいからな。他の奴が見張りだったらお前間違いなく入った時点で殺されてるぞ。感謝するんだな」

 一人は不機嫌な表情で言い、もう一人は嫌らしく笑いながら肩を叩いてくる。
 ルイは肩を叩かれたのを振り払い、触られたことで不機嫌な表情になる。振り払われた男は笑っていた顔を怒った顔に変える。

「ちっ!親切で言ってやってんだからさっさと消えろ!」

「いい思いしてる奴が居るっていうのに見張りとは最悪だぜ」

 不機嫌な表情の男は屋敷から女性の艶やかな喘ぐ声が聞こえ、一層不機嫌色を濃くした。怒っていた男は羨ましい表情を屋敷に向ける。