話がまったく進まず、立往生してこれからどうするかを考えはじめる。何故かシクシク可愛らしい泣き声が何処からか聞こえてくる。それが何処からなのか耳を澄まして聞くと、機械から聞こえてくることがわかった。エレミールが可愛らしい声で泣いていたのだ。
 ルイは信じられないものでも聞いたかのように驚いて、自分の中で何かが崩れ始めていた。

(ありえない…何かの間違いだ。惑わされるな!エレミールがあんな可愛らしい声で泣くはずがない)

 ルイは頭を左右に振り、雑念でも振り払うかのように何度も頭を左右に振った。だが、機械から可愛らしい泣き声が聞こえてくる。
ルイの中で何かがとうとう崩れ去った。

(馬鹿な…あのエレミールが可愛らしい声で泣くとは天と地が引っ繰り返っても想像できないと思っていたのに…だが泣いているのも事実)

 ルイの中ではまさに天と地が引っ繰り返ってしまった。未だエレミールの泣き声が聞こえてくる。
 ルイは心を落ち着かせ冷静にエレミールに話しだそうとする。

「エレミール、な「エミル、何泣き真似なんかしてるの?」

「ちょ、ちょっと!
ああもう、後もう少しだったのに、レシィリア。空気読んでよ、もう…」
「あ、ごめんね!」

「もう遅いわよ…」

 ルイは話そうとするが遮られた。そしてその内容に目を見開く。エレミールは泣き真似をしていたのだった。
 ルイは先程言おうとした言葉を思い出し、急にかつて無いほどの寒気が襲ってくる。ブルブルと頭を振りその言葉を振り払う。そして言わなくてよかったと心底思い安堵の表情をした。
それと同時に怒りが湧いてくる。
 怒りを静め淡々と話し掛ける。

「エレミール、騙したのかよ。お前が可愛らしい声で泣くなんて天と地が引っ繰り返えるくらい無いわけだな」

「ひどい事言うわね」

「お前の茶番に付き合ったおかけで大切な時間を食ったな…」

「わかったわよ…奢ればいいんでしょ」

 ルイは皮肉を不機嫌面で機械越しにいるエレミールに言う。
 エレミールは諦めたようにように言い、何処か楽しそうな声音だった。