「ミリア、放してやりなさい」
ルイは考えていると、以外にもマスターがミリアに話し掛けた。
ミリアはマスターの方を向き、どうして止めるのと目で訴え掛ける。
「この青年なら大丈夫な気がする。だから放してやりなさい」
「パパは無責任なこと言わないで!ルイ君が死んじゃったらどうするの!?」
「ミリアさん、大丈夫ですからこの手を離してください」
ルイは自分のことで親子喧嘩が激しくなる前に、ミリアに微笑んで言う。ミリアはルイの微笑んだ顔を見て、ほんのりと頬を仄かに赤くして、ルイの服を掴んでいた手を離した。
ミリアから手を離されたルイはやっと立ち上がり、無表情にマスターに聞く。
「ビルト・ルゲイエは何処に居るかわかるか?」
「ここの町長の屋敷を奪って住んでます。この町の北で、一番大きな屋敷だから見れば分かります」
マスターの言ったことを聞いて、身を翻して酒場の出口に向かって歩いていく。そして酒場から出ていった。
ミリアは心配な表情で無事に帰ってきてくれことを願った。
マスターはルイの後ろ姿が妙に引っ掛かって、何処かで見たことのあるような、または聞いたことのあるような錯覚に不思議に思う。それにしても、白銀色の髪をした青年とは珍しいと思いいつも通りの業務に戻った。が、すぐに驚いた顔をする。
(まさか…ジハードの疾風の銀狼なのか…!)
その異変に気付いたメリルが訝しげな表情で声を掛けるが、マスターは浮の空で聞こえていなかった。
―――――――――
町長の屋敷に繋がる静かな道を一つの足音が一定のリズムで響く。
太陽はすっかり傾き、綺麗なオレンジ色の空が広がり、暖かな光を大地に照らす。
閑静な町並みは誰一人としていなく、寂しい雰囲気が辺りを漂い埋め尽くす。だが一人の青年は淡々とした足取りで歩く姿が見える。
カーキ色のジャケットに白いブイネックのセーターに身を包み、逆十字架のネックレスを首にぶら下げながらて黒のジーンズ姿に黒のブーツを履いた青年は黙々と目的地へと足を動かす。
青年は辺りを見て、寂れた町に複雑な表情をして思う。
(此処までひどいとはな…それほどまでにビルト・ルゲイエは町の人にとって脅威なんだな)


