「なあ、ねえちゃん。俺と付き合わねえか?悪くしねえぜ。大丈夫だって!なんだったら夜は優しくするからよ!」

 ガハハと下品な笑い声を酒場に響かせた。一緒にいる奴らも同じように笑い声を上げ、女性従業員のお尻を触る。
 女性従業員は嫌な顔を一瞬するが、すぐに苦笑いに変え振り払う。それを見ていたマスターは露骨に触った奴らに敵害心をむき出しにするが、女性従業員と同じようにすぐに元に戻す。
マスターの手は心なしか震えていた。
 それを見ていた人物はすぐに何を意味してるのかが分かった。そして、まだ女性従業員に嫌らしい笑みを浮かべている奴らに向かって、うっとしいように言う。

「耳障りなんだよ」

 不機嫌な声を静かだがはっきりと集団に投げ掛けた。その声を聞いたマスターは危うく拭いていたコップを落としそうになり、慌てて取る。集団に向かって自殺行為とも取れる言葉を言った人物に、止めさせるように声を掛けようとしたが、それよりも早く集団の一人が声を荒げた。もうこうなっては仕方がない。こっちにまで被害が来ないように知らん顔をする。そしてマスターは思った。また一人犠牲者が増えてしまったと。

「はあ!? なんだガキィ! 親に言葉遣いも習ってないのか!? その口へし折るぞ!」

「まあ、待てよ。ただのガキに大人気ないぜ! こんなガキにそんな事言ったら怯えちゃうだろ。ガキなんだから!」

「そうっすね! ザキさんの言う通りですね! ガキにむきになるなんて。しょせんはガキっすからね!」

 ガハハと下品な笑い声を上げるリーダー格のザキと呼ばれた男。
 以外にもこれで納まったことに冷や汗を少しかきながら、これ以上悪化しないように願うマスター。マスターの願いも虚しく、ガキと何度も連呼されキレている人物は以外にも冷静だった。

(ガキだと! 殺してもいいかな……)

表面だけが冷静だった。心の中では八つ裂きにする計画を立て、凶悪な笑みを浮かべている。
 それに気付かず、未だガキと何度も言っているザキと子分達。

「そこのザキとか言う不細工。可哀相にそんな顔じゃもてないだろ」

 ガキと何度も呼ばれた人物は振り返りリーダー格の男――ザキに顔を向け宣戦布告とも取れる言葉を投げ掛けた。