大きくもなく小さくもない普通の町だが、辺りに人は少なく活気がない町並み。寂れた大通りを髪を靡かせながら一人の人影がゆっくりとした足取りで歩いている。その人影は昼間なのに人が居ないことに気にせずある場所に向かって歩いていく。ただ、不機嫌なオーラを全開にして。
歩いてる人は心の中で悪態を吐いていた。

(くっそ!何で俺がこんなめんどくさい事しなきゃいけないんだ!ったく童顔野郎め、今に見てろ。そのふにゃけた顔の顔面に一発パンチをたたき込んでやるぜ)

(だいたい俺より適任がいるだろ、意味わかんないんだよ。ったく、うっとしい)

 歩きながら此処に差し向けた人物に悪態を吐きつつ、足は確実に行き着く場所に向かっている。すると、突然立ち止まり顔を上げ看板に書かれている文字を見る。

(……酒場)

 心の中で呟き顔を正面に戻し、ドアの把手に手を掛けた。そして回して入る。





†心を無くした操り人形に潜む陰謀の影†





 入ると酒場に居たマスターや従業員を除いた全員といっても7人が入ってきた人物を見て視線を戻した。マスターはコップを拭きながらチラッと見て、またコップに視線を戻した。
 見られたことを気にせず、カウンターに向かって歩いていき、備え付けられている椅子に座る。と、同時にマスターは拭き終えたコップを棚に戻し、洗っておいたコップを拭きながら声を掛ける。
「お客さん、何にする?」
「そうだな……水でもいいか?」

「ん?まあいいが……」

「ありがとう」

 マスターは拭きながら怪訝な表情をして、コップを棚から取出し、水を入れて頼んだ人物の前に置いた。
 注文した人物は出された水を持ち、一口水を飲み込み情報を仕入れるためにマスターに聞く。

「マスター。ここはいつも人が少ないのか?」

「………」

「それに此処にくるまでに子供が外で遊んでいない。通りには人の気配が全然ない。何かあるのか?」

「………」

「ハアー……」

 話し掛けても黙ったままでコップを拭いている。聞こえているが答える気が無いようだ。
出だしからこんなんじゃ先が思いやられるなと思い、コップの水をまた一口飲み込み溜め息を零す。なんとかして話を聞き出そうと頭の中で模索していると耳障りな声が聞こえてくる。