大会が始まり、もうルイ達のブロックの二つ前の試合が今行なわれている。
 舞台には十人ほど居て、激しい戦いが繰り広げられている。
「数多の水よ、荒々しく猛り、我に仇なす敵を呑み込め、タイダルウォーターウェーブ」

 舞台の一角で水色の髪をした女性術者が呪文を唱えると、空中に空気中の水分が一ヶ所に集まって巨大な水玉が出来上がり、でかくなった水玉が横にどんどん広がり、津波のような勢いで敵に向かっていく。

「ちっ!大地に願うは我を守りし盾、ロックウォール」

 向かってくる津波から身を守ろうと呪文を唱え、地面から大きい土の盾が形成される。津浪が大きな盾にぶつかる。
 寸での所でなんとか津波を避けれて安心している茶髪の男性術者は手の甲で額の汗を拭っていると、大きな土の盾に亀裂が入り、それが徐々に大きくなっていく。津波の勢いに押されとうとう大きな盾が崩れ、茶髪の術者を呑み込んだ。
 茶髪の術者を呑み込んだ津波は直も止まる勢いを見せず、他の何人かも巻き込んで舞台の場外まで進んだ。
 津波の過ぎ去った舞台にはちょうど四人しか居なく、そこで終了の合図が鳴る。
 合図が鳴り終え、勝ち残ったメンバーは舞台から下りて、控え室に向かって歩いていった。

「師匠、今の上級魔法だよね?」

「ああ」

「どうして無詠唱じゃなかったんだろ」

「ルイ、お前みたいに上級魔法を無詠唱で発動する奴なんてそうそう居ないんだよ。まあ、中級魔法ぐらいならなんとかできる奴がある程度居るくらいだな」

 師匠の言ったことを聞いて、ルイはふーんと言い視線を闘技場の方へ向ける。
 闘技場には次のブロックの人たちが舞台に上がり、各々好きな場所に移動して開始の合図を待っている。ブーーと試合開始の合図が鳴り戦いが始まると同時に放送が入る。

「次のFブロックの方は選手控え室にきてください。繰り返します。次の――」

 放送から流れた声を聞いたルイとニーナは立ち上がると、クルスは涙をウルウル溜め「行くなーニーナー」と言い、ニーナの腕を掴もうとするが、それよりも早くクルスの腕をナーシャが掴む。

「ニーナ、頑張ってらっしゃいね」

 微笑みを顔に浮かべ、早く行きなさいとナーシャの目が言ってるような気がしたので、二人はこの場から闘技場控え室に急いで向かった。