雪人

　闘技場はこの観客席がぐるっと円で囲んであり、その円の中心にある。
　闘技場の形は正方形の形をしてあり、網の目のように縦横に線が入っている。
　そして何よりでかさが凄い。百メートルぐらいの長さがあり、この観客席からでもすべて見渡せるのも一つの特徴だと思う。
　ルイは闘技場見ながら感慨ぶかげに思っていたらニーナに話し掛けられ考えるのをやめた。
「ねえルイ。まだ始まらないのにこんなに沢山の人がいるなんて思わなかったわ。それに、こんな中あそこの舞台にたって戦うなんて想像できないわよ」
　ニーナは観客席をぐるっと見渡し、もう一度舞台に視線を戻し不安な表情をして言う。
　ルイもニーナの言ったことに同じことを思う。あそこの舞台でもう少ししたら戦う自分が想像できないでいた。一ヵ月前までは外の世界に行ったことがなく、それに魔物とも遭遇しなかった自分が今ここにいて猛者達と戦うとは、一ヵ月前の自分からでは想像しえなかったと思う。
「おーい！ニーナ！」
　二人して物思いに耽っていると、出入り口の方から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
　二人は声を掛けてきた男性を見て、前にも同じことがあったなと思う。
　ルイとニーナは顔を見合わせ、そしてお互い笑い合う。
　そんな二人に駆けてきたクルスは怪訝そうな表情をして問い掛ける。
「どうしたんだい？」
「ううん、なんでもないのよパパ」
　まだ納得のいかない顔をしているが、聞いても無駄だと思いクルスはこれ以上聞かなかった。
　クルスの後から、ナーシャと師匠が遅れてくる。二人も闘技場をみて驚いた声を上げた。
「あなた、席に着きましょう」
「あ、うん。そうだね」
　ナーシャに話し掛けられたクルスは相槌を打ち空いている席に座るために歩きだす。それに続くように他のみんなも歩きだした。
　席につきみんなで談笑していたら、スピーカから放送が入り、大会が始まる旨が告げられる。
　それから第一Ａブロックの試合出る人たちが闘技場の舞台に出てきて、舞台全体にそちらこちらに散らばって開始を待っている。
　マイクを持った一人の見覚えのある緑髪女性が舞台まで歩いていき、舞台の手前で言う。
「それでは、みなさん。試合開始です」
　その言葉と同時にウォーと響き渡る声が闘技場に広がり、今大会の幕が開けた。