雪人

「じゃあ、最初に行なわれるＡブロックは何時からですか？」

「Ａブロック試合開始は九時からになります」

　緑髪の女性に言われ、右手に剣を持ち鎧に兜を付けた像の近くにある時計へと視線を向けると、今は午後八時半を刺していて、もうすぐで最初にのブロックの試合が行なわれる事がわかった。

「ちなみに言っときますが、ここの闘技場は殺生は禁じられてるので注意してください。あと、試合開始する十分前に放送で繰り返し言いますので遅れないように選手控え室に来てください」

　緑髪の女性の話を聞き「ありがとう」と頭を下げ、観客席に向かおうとする。
　ニーナもルイの跡を追うために行こうとするけど、声を掛けられ立ち止まり緑髪の女性の方に顔を向ける。

「気を付けなさい。あなた達のブロックには一人やっかいな奴がいるわ。それを頭の片隅に置いといて」

　今まで表情が乏しい女性が少し感情的に話されたため呆気にとられていたが、慌ててすぐに「ありがとうございます」と言い、先に行ってしまったルイの後を追った。
　それを見届けた緑髪の女性は、自分らしくないわと思い、自潮気味に笑って呟く。

「馬鹿ね……私。今まであの頃の思い出したくもないことを思い出し懐かしむなんて……それに……似てるのよねあの子……」
　優しい表情している女性の呟きは誰に聞こえるわけでもなく周りの喧騒に掻き消された。

　ルイとニーナは観客席への出入り口へと繋がる階段を上がり、出入り口に着くないなや、闘技場の広さに圧倒された。