辺りを見回しニーナと師匠を探していると「ルーイ!」と声が聞こえ、その声が聞こえるほうを向くとニーナが手を振っていて、なんと師匠とニーナの父親と母親もいてそんなニーナを微笑ましく見ている。
 ニーナ達が居るテーブルに行き、空いている席に座るなりクルス――ニーナの父親――が声を掛けてきた。

「ルイ君といったね。君も確か、今日の大会に出るそうだね。君の師匠さんから聞いたよ」

「あ、はい」

「パパ、ルイって顔に似合わず凄く強いのよ」

 クルスに話し掛けられたルイの隣の席でニーナは笑顔で父親に言う。

「ほぉーそうなのかい。それじゃなんだ、一つ頼みを聞いてもらっていいかい?ニーナと同じブロックになったら、ニーナを助けてくれないか?」
 クルスはルイに頭を下げてニーナを見る。
 ニーナは納得のいかない表情をしているものの、万更でもないらしい。 そんな二人を見てルイも「できるかぎり守ります」といい、それを聞いたクルスも一安心とした表情で場が和やかになった。
 だか、そんな雰囲気を打ち壊したのはなんとニーナの母親だった。

「ちょっとあなた!ニーナを甘やかしたら駄目って言ってるじゃない」

「そんなこと言ったって仕方ないじゃないかナーシャ。ニーナが怪我でもしてお嫁にいけなくなったらと思うと、いてもたってもいられなくて」

 クルスがニーナの母親――ナーシャ――に向かって顔を手で覆いながら言う。

「あなたはハルヒニアの現当主なのよ。今まで続いているしきたりを無くしてしまったら、お祖父様にも申し訳がたたないでしょ。それに、火国の王に代々仕えているのよ。面目がたたないわ。クルス、しっかりしない」
 ナーシャは俯いてるクルスの手を握り言う。
 黙って様子を見ていた師匠は二人に言う。
「ナーシャさん、クルスさん、話は大体わかった。とにかくニーナが心配なんだろ二人は?そこらへんは大丈夫だぞ。ルイがちゃんとお守りをするからな」
「まあ、同じブロックになったら守るけど、なる確率低いんじゃないんですか?」
 師匠の言ったことに、パンを噛っているルイは怪訝な顔で言う。
「まあ、みてな。もうすぐ大会が始まるから」

 師匠は意味ありげな事を言い席を立った。
 他のみんなも席を立つ。 みんなで大会が行なわれ闘技場へと足を運んだ。