その視線に気付いたミューレが、
「鎌はこの魔力の時は使わないのよ、邪魔だから」と言った。
「武器なしでいいのか。弱いもの苛めは好きじゃないんだけどな」
「弱いもの苛めかどうか直ぐにわかるわ、どっちが弱いものか、ね」
 絶え間なく溢れてくる己の魔力を少し右手に集め、軽く下に下ろした。
 と同時に、バコッと何かが潰れるような音が鳴った。
「辛そうね、大丈夫?」
 嘲笑を口元に浮かべ、ミューレはミフレを見た。
 そこには、足を踏張って必死に何かに耐えているミフレの姿があった。膝がガクガクと震え、腕はダラリと脱力したように下ろされている。
「これは、な、んだ?」
 ミフレの表情は、口を開いて言葉を発するのも苦しいような顔をしている。
「それはね、この世界にもある、重力よ」
「重力、だ、と」
「そうよ。わかりやすく言えば、この世界の重力指数は1.0よ。で、今あなたの場所に降り掛かる重力指数は、その約十倍の――10.0になるわけ」
 わかった、といいたげな表情でミューレがミフレを見る。
 ミフレは上からのしかかる圧力を耐えながらミューレの話を、こんな反則的な魔力があるのを半分夢見がちに、もう半分は驚きながら聞いていた。
 世界の理(ことわり)を捻曲げて重力指数を自由に変えれるなんて、ミフレは、まるで神にでもなったかのような印象をミューレに受けた。とはいえ、そんな反則的な能力を使うのは自分と同じ人間であって、神様ではない。なら、使える時間や限度が必ずあるはずではないか。それまで、なにがなんでも耐えてみせる。
 ミフレは内なる闘志を炎のようにメラメラと燃やした。諦めた瞳ではなく、勝つ気でいる瞳が宿っている。
 ミフレは重力という名の圧力を、全身に浴びながらも口元に不敵な笑みを見せるのだった。
 ミフレの口元に浮かぶ笑みを見たミューレの眉がピクッと動く。
「その笑みは何なのかしら、余裕から? それと」
 これ以上言葉を続けれなかった。それはミューレに悪寒が背筋に走り、恐怖を感じたからだ。
 では、一体何に対して恐怖を感じたのか、ミューレ自身にも全くわからない。たが一つだけミューレの分かることがあった、それは、命の危険があるという事だけだった。