シュッ、シュッ

シュッ、シュッ


 風のきる音が鳴る。
 まだ、十歳ぐらいの少年が、木の剣を左手で持ち右手を添えて正眼の構えから振りかぶる。

 少年いる場所から少し離れた場所に、小屋があり、小さからず、大きからずの家が質素にある。
 今はまだ、太陽が昇らずにいて、辺り一帯は木々があるためか、あまり明るいとは言いがたい。


 ―――旅立ち―――



「はぁ…暑い。毎日毎日剣の素振りばっかり…もう飽き飽きだよ」


 少年は額からかいた汗を愚痴をこぼしながら拭い、剣を地面に突き刺し、右手を上に上げ、魔力を練り上げると、雪が突然振ってきた。辺りにも雪が積もっている。

 少年は雪の積もっている地面に背から倒れる。

「気持ちいい。やっぱり雪はヒヤヒヤしていいな」


 そう言って、起き上がると雪を掻き集め、雪だるまを作り始めた。


 雪だるまを作っているから、小屋から出てきた人物に気付いていない。 その人物はゆっくりと少年の近くまで歩み寄る。


「何してるんだ、ルイ」

 低い声が―ルイと呼ばれた―少年にかかる。


「え?あ、師匠・・えっと雪だるまを作ってます・・・」


 恐る恐る振り返り、師匠と呼ばれた青年に素直に答える。


「そうじゃない。どうして剣の素振りをせずに、魔法を使っているんだ?そこらへんを教えてもらおうか」


 ルイの答えにさらに低い声で問い掛ける。


「で、でもロフクラスの魔法だよ。それに、毎日素振りばっかりだし、面白くないよ!」


 ルイは言い訳を必死に師匠に取り繕うとした。