「ハッハッ……この子だけでもなんとかして安全な所につれていかなければ……」

 まだ二十歳過ぎたぐらいの若い青年が息を切らして、木にもたれかかりながら言う。

「そうね……この子だけでもなんとかして逃がしてあげないと……」


 青年と同じぐらいの女性が腕の中に居る、まだ生まれてから間もない赤ちゃんを見て、眠っている赤ちゃんに微笑んでから隣にいる青年に言う。

「そうだな。もうすぐで国境だから、もう少し行ったら大丈夫だ」

 青年は隣で腰を下ろしている女性に安心させる笑顔を浮かべた。そして、追っ手が居ないか木から顔を出す。

「奴らが来た! あともう少しだ! 早く行こう!」

 木から顔を出したら、五人の追っ手が走っていて探しているのかキョロキョロ辺りを見回している。
 青年は追っ手が近づいてきているので、子供を抱いている女性に手を差し出し、そして急いで走りだす。
それと同時に声が響く。

「おい! あっちにいたぞ!」

 追っ手の一人が気付き他の仲間に知らせて、他の仲間も気付いて走って追い掛けていった。