ドキン、ドキン 私は知っている、この足音を。 足音だけで、誰だかわかってしまう。 それくらい、何度も何度も焦がれた足音。 近づいてくるそれに思わず体が固くなる。 「あーやと!」 私の名を呼ぶ声とともに、ぽんっと頭に降ってきた手のひら。 その声と温もりにバクバクと鳴りだす心臓。 やっぱり予想は外れていなかった。 私がこうなる相手なんて、一人しかいない。 「松本、先輩」 松本涼司(マツモト リョウジ)先輩。 私が…失恋した相手。 そして今もまだ、泣きそうなくらい恋してる相手。