少しずつ積もり始めた雪のなか、手を繋いで歩き出す。
二人の間に会話はない。
最後に並んで帰ったあの日に空いていた十センチ。
それが今はゼロになっていて。
もどかしかった距離はなくなっていた。
(でも緊張する…)
何処を見ればいいのか。何を話せばいいのかわからない。
こんなに距離がなかったことはなかったから。
「な、なぁ、綾人」
「は、はい!」
悶々としながら歩いていれば、突然足が止まり呼ばれた名前。
顔を上げると、真面目な顔をした先輩が私を見下ろしていた。
「やっぱ…ちゃんと言わなきゃと思って」
そして降り注ぐ憧れの言葉。
「…栞那。俺と…付き合ってください」


