「困らせて、ごめん。泣かせてごめん。でも…綾人が好きなんだ」
私の髪を優しくといて。少しだけ震えた声で語られる言葉は、真っ直ぐに私に向かって降り積もる。
先輩から紡がれる言葉たちはどれも信じられないようなものだけど。
どれも全て信じたいもの。
だってそれは、私が諦めかけていた恋の結末。
この想いの行く先。
言いたい言葉はたくさんある。
伝えたい言葉は両手に抱えきれないくらいたくさんある。
だけど、身体中を駆け巡る想いは何一つ言葉にならなくて。
こんなときまで臆病風に吹かれるのかと悔しくなる。
ギュッ
だから私はその想いを全て乗せて先輩の服の裾を握りしめた。


