「最初は、面白い後輩がいるなと思ってただけだったんだ。声かけたのだってたまたまだった。でも会う回数が増えてから、気になるようになっちまって…去年の、夏の大会の前には、もう綾人のことが好きなんだって気付いてた」
口を挟む隙を与えずそこまで言うと、右手でくしゃりと前髪を掻き上げる先輩。
その拍子に見えた耳がゆでダコみたいに真っ赤に染まっていたのは見間違えではないと思う。
そして勘違いじゃなければ私の顔も真っ赤になっているはずだ。
だって顔が火を吹いたみたいに熱い。
じわりじわりと歪んでいく視界。
先輩の姿がゆらゆらと揺れて見にくくなっていく。


