帰宅しても灯はため息ばかり。
ダイニングテーブルに突っ伏して、気がつけば岸谷くんの事ばかり考えている。
「なぁに灯、元気ないわねぇ。」
姉の優菜がのんびりした口調で灯の顔を覗き込んだ。
冷たい机に顔を擦り付けながら灯は姉をじとーと見つめる。
「?」
相変わらずボンキュッボンのナイスバティに大人っぽい唇。
…岸谷くんはなんで自分の事なんかが好きなんだろうか。
「…お姉ちゃんぐらい胸あったらまぁ分かるんだけどね。」
「なんの話か分からないけど、あんたに胸が無いことだけは確かだわね。」
「あ、今傷つきました。」
「あら可哀想に。」
キョトンとしながら優菜は冷蔵庫に歩み寄る。
中からペットボトルを取り出し、ゴクゴク飲みながら視線だけを潰れたカエルのようになっている妹に向けた。
「なぁに?誰かに恋でもしてるの?」
「その逆だよー。(たぶん)」
「あらあらまぁまぁ。」
優菜は冷蔵庫からアイスを出し、コトンと妹の頭に乗せた。
「灯、そういうときはね、まず観察よ。」


