岸谷くんのノート


志織がソーセージを頬張りながら首を傾げる。


岸谷くん、私の事、



「あぁ、あのね…」



好きらしいよ。


「(なんて言えるわけ無い。)」


自分のお弁当箱を器用に避けて灯はガスっと机に突っ伏する。


というか、そもそも、アレは本当に岸谷くん自体が書いたのだろうか?


誰かのいたずらなんじゃ?


そんな考えが灯のスカスカな脳みそを横切った。


目の前では灯の奇行に志織が引いている。

「ちょっと!話の途中でぶっ飛ばないでよ!結構凄い音したじゃないっおでこ平気なの?!」

「うん、まぁ大丈夫。」


灯はデコをさすりながらしおりちゃんは優しいなぁあはははと笑った。

実際、志織は優しいのである。絵に描いたようなずぼらな自分が、赤点も取らず平和に高校生活を送れているのもひとえに彼女のおかげだと灯は信じている。

予想外の場面で予想外の人物から褒められた志織は、とっさにムスッとしつつも顔は赤くなっていた。


「…何悩んでんのか知らないけど、落ち着いたら私にぐらい話しなさいよね。」


「ありがとしおりちゃん。」



志織の優しさに感謝しつつ、はてさてどうやって確かめようかと灯は頭を悩ませた。