岸谷くんのノート



…ドタバタドタバタ


階段の手前まで来たとき、灯は誰かの足音を聞いてふと振り返った。

誰なんだ、こんな変な気持ちの時に廊下をものすごい勢いで走っているのは。


…ドタバタドタバタ


「…え」


後ろを振り向いた灯は目が点になった。


走っている。


岸谷くんが。




それはそれは、ものすごい怖い顔で。



え、なに、……ひぃぃーっ!



徐々に近づいてくるそれは、生物の直感に直接働いて、灯は階段を降りずにそのまままっすぐ廊下を走ってしまった。


灯は廊下を走りながら思う。


…なんとなく逃げてしまった。

そのまま階段を降りると思っていた岸谷くんは何故か灯と同じ方角に走ってくる。


……なんで?!


灯の頭の中にクエスチョンマークが飛んだ。


なんで?


勉強会は?


なんでそんな怖い顔なの?


なんで、


な、なんなのーっ?!