岸谷くんのノート








好きかもしれない。



好きかもしれない。








…その日は数学が6時限目で、勉強会は放課後に当たる形になった。


岸谷くんを囲んで6人ぐらいが思い思いの場所で彼の説明を聞いている。


「岸谷くん!ここ何だけど。」

あんまり喋った事のないクラスの可愛い女の子が自分のノートを岸谷くんの前に広げる。


隣に座っていた灯のノートの上に、バサッと今まで広げてあった岸谷くんのノートが積み重ねられた。


「ここから引っ張って来て、…それでこの公式を使って…」



「うん。」


「そうなると、…こうなるから答えはコレ。」



「あぁ!なるほど!すごーい!」


スラスラ解かれていく問題に、女の子は大きな瞳を輝かせた。


うーん…。



それとは裏腹に、灯の気持ちは淀んでいく。





…困った。







「本当に岸谷くんってすごいね。もっと暗い人かと思ってたけど、意外と喋りやすいし。」


「…。」



「もうアユミ、岸谷くんおうちに持って帰っちゃおっかなぁ。ね、岸谷くん…わたしんちでマンツーマンで教えてくんない?」


「あ、岸谷、アユミはやめとけ。すぐ食われるぞ。」


「そんなことないもーん。」


「どーかなぁ。」



ケタケタ冗談を言いながら笑うみんなの輪に、何故か入っていけない。