そう口パクをすると、いつものように彼の眉間にグワッとシワが寄る。
それを見ながら灯は手で自分の顔を隠し、こっそり笑った。
彼は今照れている。
それが何故かすごく嬉しい。
可愛いなぁ。
可愛いなぁ。
あんな怖い顔してるのに可愛いなぁ。
なんか、
好きだなぁ。
「(あ?)」
自然に出て来たその感情に、灯は顔を隠したまま、固まる。
あ、…そーなんだ。
だから女の子に囲まれてキャッキャッ言われてる岸谷くんを見ているとなんだか困ってしまうのか。
いろんな事に納得しながら灯はいつものノートに小さい小さい文字で書き加えた。
“私、岸谷くんが好きなのかもしれない。”


