岸谷くんのノート



ひぃぃーっ!


当然ながら隅田にそんな事聞ける空気ではない。


結構キツい先生なのだ。



「(どうしようどうしようどうしよう…)」




突然。




突っ立ったまま固まってしまった灯に、無造作にぬっと腕が伸ばされた。


「(え、)」


長い腕。


大きな手の平。


机にちょこんと置かれたノートの切れ端に“92ページから”とあの独特の字が走り書きされている。


灯は慌てて教科書をめくり、朗読した。



助かった…。



無事に読み終わり、ホッと席に着いた。


助かった。本当に助かった。


隅セン本当に怖いんだよなぁと思いながら灯は自分もノートを切り、ありがとうと走り書きをする。


「(岸谷くんってよくよく考えたら、いつも助けてくれるよね…。)」


優しいなぁと思いながら、灯はそのノートの切れ端を隣の岸谷くんの机の端に置いた。


ありがとう、岸谷くん。