目的地にここを選んだのは、当てつけのつもりだったのかもしれないし、ただ思い出に浸りたかっただけなのかもしれない。勢いで飛び出してきただけに、理由ははっきりしなかった。

『親の離婚』なんてものは、今じゃそれほどめずらしい話でもないだろうと思う。クラスメイトにだって、何人かはそんな子がいたくらいだし、離婚してるからああだとか、離婚してるからどうだとか、そんな感じもなかった。
だけどまさか、私には関係のない話だって、当たり前のようにそう思ってたのも事実だった。

「私たち、離婚しようと思ってるの」
「父さんと母さん、どっちについていきたいかよく考えておいてくれ」

夏の暑さも手伝って、頭の中がぐらぐら揺れる。夏休みが始まったばかりの浮かれた私に突然突き付けられた現実。これからどうなるんだろう、どうしたらいいんだろう。
かつて、お父さんとお母さんが出会って恋をしたというこのまちで、私は何かの答えを見つけることができるのだろうか。