ガチャ
「そこらへん座っといて。今、お茶出すから。」
駅からバイクの後ろに揺られること、わずか約5分。
どうやら、あたしは直宏の中学時代の先輩の家に居候する事になったらしい。
坂倉 沙雪・23歳
サカクラ サユキ
モデルのようなスラリとした身体に目鼻のくっきりとした顔立ち…世間で言う美女と呼ばれるに相応しい人。
「はい、お茶。」
「ありがとうございます…」
「敬語なんて、いいのに。敬われる人材でもないんだし…あははははっ」
そして、美人なのに笑い方は豪快。
「…あは」
笑えてないし、あたし。
「花梨ちゃん、ここは自分の家だと思ってくれていいからね。」
「はい…でも、本当にいいんですか??」
「いいのいいの、気にしないで!可愛い後輩の親友なんだもの、いいに決まってるでしょう。」
あたしは嫌がる顔ひとつしない沙雪さんに、申し訳無さが溢れてきた。
「まあ、事情聞いたら断れませんよね…すみません。」
「花梨ちゃん…」
あたしはお茶に映る情けない自分の顔を見つめた。
「直宏から…聞きましたよね。」
「まあ、少しね…」
あたしはフウッと息を吐いた。