見上げると、そこには冷たい笑顔の山崎がいた。


流石、観察と言うか…


気配もなく、いきなり現れる。

「はよ、離さんかい」


言葉に含まれる刺々しさに、斎藤は少し驚いた。

おそらく山崎は…


ライバルは多い…か。


「紅妃はん。わいも今日から此処に住みますわ~

よろしゅう」


よろしくと言うあたりで斎藤を睨み付けた。


斎藤と山崎がにらみ合いをしていると、紅妃はスルリと抜け出しクスリと笑う。


「…好きにしろ。

じゃあ、おやすみ」


紅妃は、手を振ると自室へ消えて行った。


「わい…

斎藤はんに負ける気ぃはないから。

ほな、おやすみ~」


山崎の宣戦布告に、ニヤリと笑うと、斎藤も自室へと向かった。


「…渡さぬ。

誰にも…な」


斎藤は決意に満ち、これからの恋路に思いを馳せた。