「フゥ…」


騒がしくも元気な奴らがいないと、随分静かだな…


静まり変える室内に、紅妃の疲れたため息がこぼれた。


自室で寛ぎ、コーヒー片手にぼんやりする。


しかし、アイツ…

何故ガン見なんだ…


話しの最中、ずっとこっちを見ていた。
軽く監視されている気分だ。


人と関わることが滅多にないから疲れたな…


紅妃はガバッと立ち上がると服をしまってあるクローゼットに向かった。


「広い風呂にでも浸かれば、スッキリするかな…?」


一応自室には、小さいが風呂やトイレ、キッチンまである。
自分の過去の傷痕を見られ無いために。


下着とショートパンツを持って階下に行く。


「今日はまだ、誰もいないし…

いいか…」


一人のときしか着ないラフな格好。
自身ですら嫌う傷痕を、誰にも見せたくない。


例え、それがアイツらでも…


紅妃は寂しく笑うと、服を脱ぎ捨て、風呂に入った。


身体を洗い、ふと、嵌め込まれた鏡を見る。


「…醜い」


鏡に映る自分の身体は、刃物の跡や煙草、殴打による変色。

そして…


親に熱湯をかけられ、ぼこぼこしたケロイド。

その形はまるで巨大な蝶のように、背中に広がっていた。



いつまでも消えない傷痕。


だが…それでいい。


弟を助けてあげられ無かった戒めなんだから…