side,斎藤・井上


「帰る方が一緒だなんて、嬉しいねぇ」


井上は、ニコニコと斎藤に話しかけた。


「源さんは…店はどうするんですか?」


待ち合わせの間にお互いの現状を皆で話していたが、井上の店をやっている事を聞いた斎藤は心配した。


「続けて行くよ。

御厨さんもその方がいいと言ってくれてるしね」


いつの間に聞いたのか、方向は決まっていたらしい。


「無用な心配でしたか…

失礼しました…」

「いやいや。

ありがとう、斎藤君」


相変わらず、優しくまるで父のような井上に、斎藤は嬉しく思った。


「ところで、斎藤君は随分彼女が気になるんだね」


「!!?」


井上は、斎藤が話しの間ずっと紅妃の事を見ていたのに気がついた。

しかし、斎藤の反応に、まだこの発言が早かった事に気がついて苦笑した。


昔から、変わらないね…


年寄りのお節介とは思いながら、井上は斎藤を焚き付けた。


「彼女…今、あのビルに一人かぁ…

女の子が一人とは心配だね…


もし、強盗なんて来たら…」


「ッ!!

源さん、申し訳ないが俺は今日から彼処に住む」


井上の言葉に青ざめ、目を見開いて口早に謝り、元来た道を駆け出した。


「フフフ。


若いってのは、いいねぇ~」


既に見えなくなった斎藤を思い、少し黒い笑いをこぼした。


「私は応援するよ、斎藤君」



井上は、これからの事を楽しみに、夜の街をゆったり歩き帰宅した。