全員のピリピリした気配の中、紅妃は一人楽しげに笑う。
「別に、私がどうこうする訳じゃない」
「だったら、なんだよ?」
土方はしびれを切らしたように、眉間に皺を寄せて突っ掛かる。
「フ。
だが…
その前に、永倉、原田、聞きたい事がある」
「「えぇ、俺?」」
いきなり、矛先が向いた2人は慌てながら、ハモった。
「お前達、近藤を『今』許せるか?」
近藤の名を聞き、2人の目付きは鋭くなった。
「近藤の最後の乱心は、実際、お前達を逃がすためだった。
倒幕の進行は、決定的だった。
だが…法度により逃がすにも限界がある。
近藤は、自らの破滅でしか、お前達を逃がす事が出来なかった。
土方も知っているだろう?」
「「…」」
「実際、沢山の本や授業で学び、記憶が戻り照らしあわせて見れば分かるだろ」
紅妃の言葉に、皆理解している。
「今になれば分かる事が沢山あるのは否定しねぇ…」
原田が言うと永倉は少しうつ向いた。
そんな2人を見かねて土方が口を開く。
「…近藤さんは、最後にこんな事でしか逃がす事が出来なくてすまないって言ってたな…」
2人はバッと顔をあげる、泣きそうに顔を歪めた。
「確かに…
同志にそんな事をして一番傷付いくのは、近藤さんでしょうね」
山南が、さらに言葉を紡ぐ。
正に、鬼と仏の副長の姿だった。
