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「ねー、これ、僕に似合うと思わない?」

「…あんさん、何してはるん?」

「ん~?

買い物?」

お梅は、漸く掴んだチャンスに喜び、後は芹沢を待つだけと安心していた。


なのに、事ある毎に吉田は、お梅のいる菱屋にやってくる。


今朝は、やっと大阪に行っていた芹沢が帰って来たと噂を聞いて喜んでいたのに、吉田の登場に一気に気分が下がった。


「ねー?聞いてる~?」


「…えらい、似合うてはりますわ~」

「ん~、適当だねー」


お梅の嫌がる顔つきに、楽しげ笑う吉田の目は冷たく冷えていた。


「まぁ、良いんだけど。



君は何時になったらアイツラに接触するのさ?


いい加減、つまらないんだけど?」


朝から下らない会話しに来た訳じゃなく、吉田は催促に来たらしい。


「…うちかて、ちゃんと考えてるわ」


冷たい瞳に内心怯みつつも、きっちりみかえせば、吉田は楽しげ笑った。


「…ふーん…


なら、



良いんだけど?」


吉田は確認だけ済ませると、さっさと帰っていく。

一体何をしに来たのか…


「はぁ…」


もうそろそろ、あの人が来る。私を知らないあの人。


また、見つけてくれるやろか…

思わず零れたため息を破る様に声が聞こえた。


「すまんが、店主を出してもらいたい。


儂は、





芹沢鴨だ」



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