下へ降りて見れば、既に芹沢達も揃い、力士達と睨み合っていた。


「遅かったですねー

紅妃!」


芹沢や力士が言い合うなか、ニコニコと沖田が話しかけて来た。

緊張感の欠片もなく。


「良いのか?

混じらなくて?」

「えー…


面倒ですよ~」


それに…と沖田は、チラリと睨み合う集団に視線をやると、釣られて紅妃も目線をやる。


「何か、一君がヤル気満々ですもん」


「確かに…


珍しいな」


最早、乱闘に為りそうな気配の中、斎藤は刀に手を添え抜刀体制だった。


力士の掛け声と同時に遂に乱闘になった。

八角棒で殴りかかる力士に対し、刀を抜き応戦する中、芹沢は悠々と鉄扇でなぎ倒していく。

傍観していた紅妃の方向にも力士は襲いかかってくるが、紅妃はヒラリとかわし、沖田を盾にする。


「ちょっとッ!!

酷いじゃないですかッ!!」


ブゥと膨れっ面になりつつも、悠然と刀を抜き、力士を切り伏せる。


「余裕じゃないか」


そんな沖田を鼻で笑った紅妃は、ヒラリヒラリと乱闘中が嘘の様に、中央へと歩いていく。


激しくぶつかる芹沢の前に行くと、喧嘩をふっかけて来た力士の前に立つ。


「なんだッ!!


餓鬼が邪魔すんなやッ!!」


理性を無くした力士は大きく振りかぶった。


「「「「「紅妃ッ!!」」」」」


少しうつ向いた紅妃に皆が焦る。

しかし、誰も気が付いかない。

薄く、



暗く




笑う紅妃に。


「…憐れ…」


小さい呟きと同時に、勢い良く上がる血飛沫。


突然の事に誰もが唖然とし、乱闘の手は止まり、静まりかえる。


派手に血飛沫を上げ倒れた力士の前には、冷たい瞳の美しい修羅がいた。