歴史通り山南の提案で宿に行く前に、北新地にある『住吉楼』という、京でいう花街で一旦休憩する事になった。
紅妃は、本気で具合の悪い斎藤に肩を貸しつつ、ゆったりと進んで行く。
しばらくすれば川に差し掛かり、橋の向こうから力士が笑いながら此方にやってくる。
…後少し…
芹沢は、力士を気付かず橋を渡り始めるも、酔っぱらいの力士達は、大声で話しながら道いっぱいに広がりやってくる。
遂に、芹沢の目の前にまで来てしまう。
「退かぬか!!」
「あぁ?
なんやぁ?侍がぁ!!」
「せや、せや!
田舎侍が、なんじゃぃっ」
ベロベロに酔った力士達は、気持ちも強く芹沢をはね除け、さらにはニヤニヤしながら道幅いっぱいに広がった。
もとより、斎藤の心配と仲間が馬鹿にされた芹沢は力士達と退け、退かぬと押し問答を始め、遂には、自慢の鉄扇で目の前の力士を捩じ伏せた。
ガンッ!!
「ぐッ!!」
其でなくとも、力強い芹沢の一撃にうち据えられた力士は昏倒した。
ざわめく中、芹沢は鼻で笑う。
「力士ごときが儂の道を阻むからだ。
皆、行くぞ…」
倒れた力士に、仲間の力士は駆け寄り憎しみの籠った目で、紅妃達を睨み付けた。
紅妃達も田舎侍と言われ、力士の睨みもものともせず、颯爽と立ち去っていった。
