「…で。
いったい、何の用でついて来た?」
暗い夜道で灯を紅妃が持ち先導してしばらくすると、芹沢が切り出した。
紅妃は楽し気に黙って先を促した。
「お前が何の意図もなく、こんな事はしないだろう」
芹沢はパシリと手で遊んでいた鉄扇を閉じると、紅妃はクスクスと笑う。
「…いえね、家の可愛い鬼さんが法度を作りましてね?
私は家の可愛い鬼さんの為に許可が欲しいなーと、思いまして…
貴方ならくれるでしょう?
楽しい…
鬼狩りの法度の…
許可を」
暗闇にほんのり浮かぶ紅妃の顔は、綺麗で恐ろしい顔だった。
「…ほぅ。
なるほど…」
芹沢は納得してチラリと道の先に視線をやる。
「何なら、この先に家の可愛い鬼さんが居ますから見ます?
内容」
「要らぬわ。
貴様の可愛い鬼とやらに伝えよ。
許可するとな」
芹沢は言い置き、さっさと歩き出す。
「お前の方がよほど鬼だがな」
「お褒めの言葉と取っておきまりね?
では…お休みなさい。
芹沢筆頭局長殿」
屋敷に着くと、芹沢に声をかけようとした土方を止めると、芹沢はチラリとこちらを見て屋敷へと入って行った。
「紅妃?」
許可を得ろと言った本人が、土方を止めた事に疑問を持ち眉を寄せると、紅妃は不敵な笑みを浮かべ振り向いた。
「喜べ、土方。
芹沢は了解した。
大阪後に発表だ…」
その顔は美しくも恐ろしく、支配者の如く落ち着いていた。
感情は一切無く、理性に支配された顔。
話し終えると、土方を見ずにさっさと屋敷へと入って行った。
「…はは、
本当に敵になったら最悪だな」
