紅妃は入り口近くに座ると、近藤は土方に向き直ると用件を話し出す。
「実は、さっき芹沢さんが来てな。
御厨君の歓迎会をする事になったんだ!」
…やっぱり…
紅妃は、誰にも気付かれないようにため息をつく。
…面倒くさい…
土方は、そんな紅妃に気付かず近藤に場所を聞くと、近藤は満面の笑みで答えた。
「嶋原!」
とっても楽し気に言う近藤に、紅妃の性別を知る3人は何とも言えない顔になる。
「…ふぅ
局長、ありがとうございます。
楽しみにしています」
紅妃はそんな3人の心境を理解して、近藤に感謝する。
近藤は、うむ!また今夜!と爽やかに笑うと土方の部屋から足取りも軽く退室したのだった。
「…助かった。
すまねぇな…紅妃」
「いえ…」
何とも気まずい雰囲気に、また微妙な沈黙が流れる。
しばらくして、紅妃は何か思い出した様に、土方に向き直る。
「…土方。
丁度良い。宴会後にでも法度の許可を取れば良い」
「紅妃、その事だがよ…
思い出したが時期が早くねぇか?」
土方は眉間にしわを寄せながら、思い出した法度の時期について、紅妃に問うと、紅妃はニヤリと笑った。
「…土方、もう一つ思い出さないか?
お梅が来たのは、大阪後。
何も、今発表する必要は無い。
時期がずれても良いと許可はある。
許可をもらい、大阪後に発表すれば大丈夫だ。
許可さえ手に入れば、お梅が手出しし辛くなる」
3人はハッとする。
紅妃の先手に回る手腕は、土方のさらに上を行く。
外堀から…確実に。
あまりにも美しく、鬼より鬼らしく。
「…はっ。上等だ…」
土方は、紅妃の様な人が過去にも居れば…と少し恐怖しながらも惹き付けられた。
