その頃、道場からでた芹沢、紅妃は…
お茶を片手に八木邸の縁側にいた。
「…貴様は何が目的だ?」
芹沢といて一向に話す気配が無かったのに、やっとでた発言に紅妃は驚いた。
「…随分、直球勝負ですね?」
「貴様じゃあ面倒くさそうでな」
ニヤリと笑う芹沢と、面倒くさいと言われた紅妃はフフっと笑う。
「…私は組の為にいますよ。
貴方こそ、『そのまま』やりきるつもりですか?」
一瞬、キョットンとした芹沢が突然爆笑しはじめた。
底抜けに明るく笑う芹沢は、歴史に残る姿とは違った。
この姿こそ本当の彼なんだろう。
ひとしきり笑うと、芹沢は優しい顔のまま、紅妃を見た。
「さぁな…
だが、儂は儂だ。
『誠』のまま生きるさ。
それで散ろうとも満足だ」
紅妃は、芹沢の生き方に悲しみを覚えるが、それが芹沢の『誠』。
ならば…
「…せいぜい、最後まで貫いてくださいね?
見届けて差し上げますから。
その為ならば、修羅にでもなってあげますよ」
「そりゃ、心強いなぁ」
2人は秘めた笑顔をすれば、話しは終いだと言わんばかりに、縁側からお互い別方向に歩き出す。
「頼むぞ、御厨」
お互いに背を向け、零れた芹沢の呟きに、紅妃はヒラヒラと手を振った。
どちらも振り返らなかった。
