「きゃあぁああぁあーッ!!」
武田の乙女な悲鳴が道場に木霊し、気絶した。
「…」
「…」
紅妃と芹沢は無言のままに、武田を一瞥すると、頷いた。
ドガッ!!
同時に足を振り上げ、気絶した武田を全力で蹴り、道場の隅にぶっ飛ばす。
「初めまして、芹沢先生ですね?
土方の小姓に成りました、御厨です」
「がははっ、随分な奴だな!
確かに芹沢鴨は儂だ。
少し、茶でも飲むか?」
「良いですね。
行きましょうか」
いつもには無い、穏やかな笑顔の芹沢と紅妃に周りはひきつった。
あはは、うふふと道場からフェードアウトする2人を誰も止める事が出来ずに眺めるだけだった。
「…一君。
不味いよね。あれ」
「…あぁ。
副長に報告せねば…」
我に帰った2人は焦って土方の部屋に向かって走っていった。
「おやおや…
さぁ、皆、稽古を続けようか」
井上はパンパンと手を叩き、隊士達の意識を稽古へと引き戻す。
井上先生、と隊士に呼ばれ振り向く。
「どうしました?」
「武田先生はどうしましょうか?」
隅に転がりズタボロの武田を井上は一瞥するとニコリと笑い隊士に向き直る。
「捨て置きましょう」
的確、明瞭に吐き捨てた。
その後は見向きもせず、井上は稽古をしていく。
武田が嫌いなんですね…
井上さん…
隊士達は、初めまして井上の嫌いなものを知った。
