「しっつれーしまーすっ!!!」
沖田の大きな声に道場内視線が集まる。
中では、指南役の井上と、武田観柳斎がいた。
紅妃が稽古を嫌がる理由は、沖田の相手と、武田だった。
この武田と言う男は、近藤に媚びを売り、権力をかさにきて、男色をする奴だった。
紅妃の見た目がお気に召すようで、何かと絡んでくる。
「…最悪」
「ッ!!
御厨君ッ!!」
キラキラとした笑顔で、両手を広げ近いて来ると、紅妃はさっと斎藤の背後に隠れ斎藤を盾にする。
その姿はまるで、無表情の斎藤に手を広げ歓迎するようだった。
あまりの気持ち悪さに、周りはドン引きしてしまう。
「…」
「…」
斎藤と武田は見つめ合うというか、にらみ合う。
「…沖田、やるか…」
紅妃は、自分のせいでそうなっているにも関わらず、2人を放置して木刀を取りに行く。
「斎藤、お前もやるか?」
「ええ~
2対1ですか?」
「面倒くさいからな…」
沖田の反論をシカトしつつ、紅妃は斎藤に木刀を投げた。
つまりは沖田、斎藤対紅妃だ。
さらに紅妃は木刀を2本持つと道場の真ん中に行く。
「源さん、すいません…
少し借ります」
「構わないよ。
皆、よく見ておきなさい。
滅多にないからね。
審判は私がしよう」
井上は、周りに促すと紅妃のもとへ行く。
「ちぇ…
私だけで良かったのに…」
「…同感だ」
少しふてくされた沖田と斎藤も紅妃の前に着くと、構えをとった。
