夜が明け、空が白み始める頃土方の部屋で1人が起き上がる。

煙草を1本出して火をつける。

スパー


「…朝…」


不機嫌に呟くのは紅妃だった。

隊士として挨拶をして3日。

仕事や平隊士にも慣れ、今や普通に生活をしていた。


「飯…作るか…


その前に…道場」


煙草を消すとのっそりと立ちあがる。

誰も活動していない時間、紅妃は1人で道場で瞑想や稽古をするのが日課になっていた。


土方を起こさない様に、静かに着替えると、井戸に向かう。

顔や身体をまだ冷たい井戸水に浸した手拭いで拭くと気持ちがスッキリした。


目が覚めて軽い足取りで道場に入ると一礼し、道場の真ん中で座禅を組むと瞑想する。

しばらくして立ちあがると、持って来ていた刀を抜き静かに空を薙ぐ。

何回か繰り返し、刀を鞘にしまう。


「…いい加減、覗きは辞めたらどうだ?





斎藤、沖田」


声をかけると、入り口から斎藤と沖田が現れた。


この2人も早起き組で、紅妃が稽古していると毎回覗き見していた。


「総司で良いですよ!」

「俺も一で良い」


2人はゆっくり入って来ると、紅妃に言った。


「…はぁ…


わかった。総司に一な。


とりあえず、飯を作ってくる」

紅妃は適当にあしらうと、手をヒラヒラさせて道場を後にした。


「たまには、私達と稽古して欲しいですね、一君」

「そうだな…」


2人は木刀を取るとひっそりと稽古を始めた。