その頃森の中では、小さな光が人の形へと変化し1人の人間が現れた。

「………」


周りには人は居らず、広大な木々と電線や車のない古い町並みが広がっていた。

少し高台になっている場所から紅妃は町を観察する。

着物で髷や、大小を提げた町人で賑わっていた。


「無事に着いたか…

奴らに会いに行かなくてはな…」


1人呟き、町へと足を向けて歩き始めた。


しばらく歩くと、はんなりと京なまりが聞こえ、町は活気に満ちていた。


紅妃は着物を着ては居ても、服の間から覗く詰襟やブーツ、派手な羽織。

そして、男か女か分かりにくく、美しい容姿に少しういていた。

「…さすがに、この服はまずかったか…」


少し反省しつつ、土方達が待つ屯所に向けて早足になる。



「お侍様!堪忍しておくれやす!!」


歩く先に悲鳴と人だかりが出来ていた。

紅妃は人だかりに混じり観察すると、どうやら茶屋の客の侍に店の娘がお茶をこぼしたらしい。

「どうしてくれる!

我らが守ってやっているのに、無礼だぞ!」


「可哀想に…

浪士のほうから、娘にぶつかったのに…」

「ありゃ…あかんなぁ…」


野次馬は助ける訳ではなく、小声で囁き合う。


…気に入らないな