それをあわてて隠して

「あと少しでつくから、ここでいいよ。
ありがとう。」

手を振って帰ろうとしたら
手首をつかまれた。


「ねぇ、アド聞いてもいい?」

茶色がかった濡れた瞳に見つめられて
少しドキッとした。

その瞳を見ていられなくて
そらしながらうなずくと

クスッと笑われた。



交換して帰ろうとすると

「ねぇ…入学式の日のこと、
謝りたいんだ。
いまさらなんだけど。」



入学式…
入学式……
入学式…………?



「え?なんのこと?」


「…覚えてないならいいや。
ひきとめちゃってごめんね。
また明日。」


いっぱいの笑顔で
大きく手を振りながら
隼斗くんは反対方向に歩いていった。