柾彦は、扉が閉まると同時に長椅子に崩れるように座り込んで、
両手で顔を覆った。
「柾彦さま。いつもお元気な柾彦さまがそのようなお顔をなさると、
私も元気がなくなってしまいます。
柾彦さまは、大層お疲れでございますのね」
祐里は、長椅子の隣に座って、柾彦をふんわりと優しく抱きしめる。
柾彦の激しい恋慕と祐里の穏やかな慈悲のこころが交錯して、
二人を切なく包んでいた。
次第に祐里の慈悲のこころが、柾彦の疲れたこころをじんわりと
癒していった。
「姫、大変失礼な事をしました。
本当に申し訳ない。どうか許してください」
しばらく静寂の時間が流れて、柾彦は、我に帰り、
祐里に深く頭を下げて、非礼を詫びた。
「柾彦さま、私は何も気にしてございません。
もう大丈夫でございますね。
おばさまがお待ちでございますので、お茶に参りましょう」
祐里は、何もなかったかのように微笑んだ。
それから、柾彦は、祐里に促されて、
自宅で結子と共にお茶の時間を過ごした。

