アキラはバツの悪そうな顔をして下を向いた。斜め前に座っているお兄さんは足を組んで何も言わない。アキラに言わせるつもりなのだろう。少し、沈黙が続いた。
「…俺の苗字、覚えてるか?」
「え、い、一条…」
不意の質問に戸惑った。もごもごと口を動かせば、アキラは力なく笑った。
「そう、一条。―――吸血鬼の世界でその名を持つ者は相当の権力を握ってる。…俺の親父は全ての吸血鬼を統一した…所謂、王だ。そして、その正室との子が兄貴、レイラで、…俺は親父と側室の人間の間に生まれた混合血ってやつだ」
やっぱり、とは思いながらも動揺は隠せない。視線が定まらず、ゆらゆらと視界が揺れる。
「…で、俺は人間の血も半分入ってる訳だから、常に血が必要な訳じゃなかったんだけど…。年齢を重ねるにつれて、禁断症状っていうか、吸血鬼の特徴が出てきた。お前をここに連れて来た時みたいに、あり得ない速さで走ったり、血が欲しくなったり…
それで、その発作を抑えるために鎮静剤を投与してたんだけど、どうも俺には合わなかったんだ。身体が受け付けないから、もう鎮静剤を飲むのをやめた。そしたら、無性に喉が渇いて…後はお前が体験した通りだ。
―――本当に悪かった、ごめん」
一気に言われて、頭では理解できてる筈なのに受け入れたくないのか、現実逃避をしようとしてる。
「……もう、疲れたろ。家まで送る」
そう言ってアキラが立ち上がろうとしたのを、お兄さんが止めた。自ずと視線はお兄さんに向ける。
「そんな中途半端な話してんじゃねぇよ。こいつの質問に答えてやってねぇだろ」
「……ッ、」
「そんなんだから自分のことも自制出来ねェんだよ。いつまでも周りの所為にしてんじゃねーぞ」
アキラの顔が歪んだ。
