伝染。



渡された洋服に腕を通すと女の人にリビングまで案内された。ドアの前まで来ると、『私は洗濯してきますので』と言い私の血がついたタオルとカッターシャツを持ってお辞儀をすると、くるりと踵を返して行ってしまった。
その後をぼんやりと見送って、リビングの戸に向き直る。…何か、入りにくい……。が、意を決してノックをしようと腕を上げた時、中から話し声。



『―――血を吸ってしまった?アキラ様、お言葉ですが…』
『わかってるよ。でもしょうがねーだろ!俺も悪いけど、あの場に居たあいつも悪いぞ』
『鎮静剤を飲まれなかった貴方に非があります』
『わーってるって!』
『いえ、わかっておりません。三宅様が―――』



中途半端に上がった手を下ろした。

…今、何て……


心臓が変に動いて、視界が揺れる。困惑で手が震えてる事に気づいて、強く握ってみるがどうにも止まらない。じっと固まっていると、不意に後ろから手が伸びて来て、目の前のドアが開いた。
驚いて振り返ると、金髪の男の人と目があった。そしてその人は無表情な顔で私の横をすり抜けるとリビングへと進んで行く。彼を追う様にリビングに目を向ければ、驚いた顔のアキラと、使用人らしき男の人。
しばらく固まっていた二人だったが、金髪の人がソファに堂々と座り込んだとき、ようやく封を切ったように声を上げた。



「兄貴…!てめぇ、何してん…」
「声だだ漏れだったぞ?さっさと説明してやれ。不安で精神的に参るぞ」
「……クソ」



アキラのお兄さんだったのか、と頭の隅で思いながら会話を右から左へ流していく。最後の方は何を言ってるのか分からなかったけど、明らかにアキラの機嫌が悪くなった。




「……もうこんな時間だ。送ってく」
「アキラ様!レイラ様の言葉に従って下さい。どの道、三宅様には知らせなければならない事です」
「別に…今じゃなくてもいいだろ」
「いえ、今話すべきです。このまま時間がたてばどうなるか…」
「うるせえ、俺に口出ししてんじゃねぇよ」



舌打ちをしてこちらに向かって歩いてきたアキラ。そのまま私の手を取って行こうとするが、私は足を絡ませて転んでしまった。
ワリ、と謝ったアキラの動きが止まる。―――足震えてんの、バレた。