「三宅、」
私の名前を呟いて、慌てて近寄ってきたアキラが少し怖かったのか、反射的に退いてしまった。それを見たアキラは一瞬戸惑っていたが、すぐに眉を寄せて地面に落ちていたカバンからタオルを取り出すと、首をおさえていた私の手を剥がしてタオルを押しあてた。
「…あのさ」
「悪い、三宅。ちゃんと話すからとりあえず俺んち来い」
「……うん、そうするわ…」
アキラは制服の袖で口元の血をぬぐうと、私を背中にのせて歩きはじめた。
あーあ、いつもの道で帰ってたらよかった。とか呑気なことを考えれるようになった頭をアキラの肩にのせて、目を瞑った。血を流し過ぎたみたいだ。貧血で頭がくらくらする。ついでに少し寒い。
「……人目気になるから、走んぞ」
「…落とさないでね」
アキラの服をしっかり掴むと、何と奴はあり得ないスピードで走りだした。
さっきの血を吸われたことといい、この並はずれた足の速さといい…あ、あと、無駄に整ったこいつの顔。……まるで吸血鬼みたいだな。
私は頭の片隅でそんなことを考えて、妙に本物臭い、と怖くなった。
でも、今この場で拒むことは出来ない。ここで頼れるのはアキラだけだから。それに私はこいつを信じてる。―――そう自分に言い聞かせて、心に残る不安を無視した。
