男は、かつて『赤の雷神』と呼ばれていた。 今でもそう呼ぶものは少なくないが、しかしどう足掻いても現在進行形にはなりえない。 老いぼれていく英雄に人なりの情けをかけた意をこめたもので、男にはむしろ耳に痛かった。 自覚はしている。 赤の雷神とはかつての自分であり今横たえているのはもはや咆哮すらままならぬ老人なのだと。