「あ……」


 離れて行く手をみて思わず声をだす。





「今度はどうした? 俺何もやってねぇよ」

「う゛…」




 そう言って少し涙目になった私は奴を睨む。




 奴は一瞬考えたような顔をしたけど、すぐに何かを確信したように口角を少し上げた。





「お前が離れろっつったんだからな」

「離れろなんて言ってないよ! 急に引っ張らないでって言ったの~」



 私たちがイチャついてると思ったのか、彩芽は気を利かせて席に戻って行った。




「じゃあ何? ハグしてほしいわけ?」

「そ、そういうわけじゃ…」

「素直じゃねぇなぁ…」



 呆れたように笑う奴。



 どうせ素直じゃないもんね。





 私だってもっと素直になりたいよ。




「仕方ねぇな」


 黙っていると奴はそう言って私の手を取った。



「ハグは誰もいねぇとこじゃねぇとさすがに恥ずい。手ならいい」

「……ッ////」




 なんだかんだで一番私のことをわかってるのはこいつかもしれない。