やっぱりあの子だ。



「……大丈夫?」


 小さな声で声をかけた。



 すると、ビクッと肩を上げてからゆっくりこっちを見た。




 そして小さく頷く。




「神山…だよね?」

「怜斗君は…悪くないよ」



 涙を真新しい制服の袖で拭う女の子。



「強いね…」

「そんなことないよ…。あなたは…もしかして花ちゃん?」

「そうだよ?」

「恋愛相談…上手なんだよね?」



 学校ではそういう噂が流れているらしい。



「恋愛には限らないけど…話なら聞くよ?」



 私はハンカチを渡す。




 小さな手で受け取ると小さな声で話し始めた。




「入試の時から…好きだったんだ……。消しゴム忘れちゃって…そしたら、怜斗君が半分分けてくれたの」


 
 あいつ…私以外には優しいのか。